学ぶ意味について、また考えていますね!
誰しもが一度は考えたことがある「なぜ学ばなければならないのか?」
今回の記事は、「なぜ学ぶのか?」シリーズ第5弾です。
まず初めに毎度お馴染みの前提です。
それは「なぜ学ぶのか?」に答えはないということ。
▼「???」と思った方は、ぜひ第1弾の記事を読んでみてから本記事をお読みください。
学ぶ意味は人それぞれ。
ですから、みなさん自身が納得できる理由を探していく必要があるのです。
その上で今回は、幸福になるための土台の一つである「人的資本」に着目して学ぶ意義を考えてみたいと思います。
作家の橘玲氏は、幸福になるためには「人的資本」「金融資本」「社会資本」の3つの資本の必要性を述べています。
その中でも「人的資本」の増加は、学びと直結します。
今回の記事では、みなさんが幸福に生きるための3つの資本と関連させながら、学ぶ意味を私なりに紹介していきます。
教科学習・探究学習・受験勉強の3つの視点から、人的資本を高めるためのポイントも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
みなさんの「なぜ学ぶのか?」に対する納得解の一つになれば嬉しいです。
高校教員として、数学を10年以上教えています。
内容をただ教え込むのではなく、「数学の学び方を教える」をモットーに授業を実施しています。
生徒が主体的かつ協働的に学ぶ授業スタイルを目指し、「なぜ数学を学ぶのか」を意識した授業を心がけている。
目次
人的資本とは?
「人的資本」ってなんですか?
人的資本とは、協調性などの「資質」や知識・スキルなどの「能力」を、個人が価値を生み出す資本としてみなすことです。
資本とは公民で学習したとおり、事業活動などの元手のことです。
作家である橘玲氏の書籍『幸福の「資本」論』の中では、幸福になるために「金融資本」「人的資本」「社会資本」の3つが必要と紹介されています。
簡単に説明すると
上記の一つだけが大きくても、他のものが全くなければ幸福は感じられません。
つまり、「金融資本」「人的資本」「社会資本」の3つをバランスよく磨いていく必要があるのです。
確かにお金だけ持っていても、家族や信頼できる友人が誰もいないのは寂しいかも…。
高校生は人的資本を磨く時期?
幸福になるための3つの資本を確認したところで、今回は人的資本に着目して考えてみましょう!
本記事のテーマである「なぜ学ぶのか?」
その特殊解の一つは、人的資本を高めるためです。
特に高校生くらいまでは人的資本を磨くチャンスです。
なぜなら、若いうちは吸収も早く学ぶのに最適な時期であるからです。
金融資本のための人的資本
人的資本の優先度を金融資本と比較しながら見ていきましょう!
2022年の学習指導要領から家庭科で金融教育が始まりました。
また2024年から投資による利益が非課税となるNISA制度も拡充されるなど、金融資産への意識強化が時代の流れとなっています。
しかし、投資の重要性は高いながらも、自分自身で稼ぐ力をつけることがより重要です。
なぜなら、投資の世界は入金力がものをいうからです。
100万円を持っている人が1%の運用益を出したら1万円。
一方で、1億円を持っている人は1%で100万円にもなります。
また、投資で大切な長期・積立・分散をしていくことを考えてみましょう。
毎月1万円の積み立てを年利5%で運用すると、20年後の利益は約170万円です。
一方で、毎月5万円であれば、利益は5倍の約855万円です。
このように数学IIBで学ぶ複利の力は絶大なわけですが、やはりいくら入金するかが金融資本増加のカギになります。
まずは、自分自身の力を高めることが重要ですね!
複利よりも重要なこと
それは自分自身で稼ぐ力をつけることです。
そのために基本的な知識を獲得したり、思考力・表現力を高めたりすることが、学校において学ぶ意味の一つになるうるのです。
もちろん、アルバイトなど高校生のうちにお小遣いを得ることが悪いわけではありません。
目の前の金融資本調達のためには、アルバイトが一番早いのは事実です。
しかし、目の前のお小遣い欲しさに闇雲にアルバイトをするのは好ましくありません。
それが長期的に自分の人的資本の増加につながっている経験なのか。
その視点も考えながら取り組んでみましょう。
大学進学への学び、起業のための学び、就職のための学び、そのために自分自身を磨くことが人的資本の増加につながっていくのです。
社会資本のための人的資本
続いて人的資本と社会資本を比較してみます。
社会資本とは、簡単に言えば人間関係です。
小学校の同級生とずっと一緒に老後まで過ごす人は、それほど多くはありません。
中学・高校・大学と進み、自分と同じ価値観や新しい世界での人間関係が出来上がるのが一般的です。
学びは新たな世界との出会いです。
学ぶことで新たな世界に入り、そこにいる新しい人たちと出会うことができます。
その人が一生の付き合いになるかは分かりません。
しかし、人的資本を高めることで社会資本を高められる可能性が広がっていくのです。
また人的資本は、新しいことに挑戦する力、コミュニケーション能力など、いわゆる非認知能力の部分も含まれています。
好奇⼼,忍耐⼒,創造性,責任感,⾃制⼼,粘り強さ,社交性,積極性,活発さ, 共感,信頼,協同,ストレス耐性,楽観主義,感情コントロール,達成動機,⾃⼰効⼒感 など
引用:OECD(2022)社会情動的スキルの国際⽐較
よりよい人間関係を構築するためには、上記のような力が欠かせません。
人間性を磨く高校生の時期だからこそ、教科学習以外の学びも深めてほしいと思います。
大学受験に向けた勉強だけが、学びではないですよね。
人間性を磨くための学びもしていきたいです!
人的資本を磨くための学校での学び3選
自分を磨くことの大切さが分かりました!
では、学校の学習との結びつきも詳しく教えてください!
学校での学びに焦点を当てて、人的資本へのつながりを考えてみましょう!
人的資本を磨くためには、学び続けることが必要です。
その学びは学校にもあるでしょうし、もちろん学校外にもあります。
高校生にとって一番長い時間を過ごす学校での学びに焦点を当てて、人的資本の高め方を考えてみましょう。
高校教育は高度な学びへの入り口
まずは教科の学習についてです。
高校での教科学習は、より高度な思考力を身につけるのに最適です。
高校の学びは小学校・中学校と比べると日常から離れるため、内容が抽象的で難しいですよね。
でも、この難しさが思考力を高めるために非常によいのです。
ゲームで例えるなら、ずっとレベルの低い敵を倒していても効率よくレベル上げはできませんよね。
ちょっと手強い敵に挑戦することで、効率よくスキルを上げることができます。
高校の教科学習も同じです。
難しい問題に挑戦することで、自分の「学びの力」を強化できるのです。
さらに、大学まで進学する人であれば、高校での学習はより高度な学問を学ぶための基礎となります。
大学では、さらに高度な問いを深めることで、高校を超える思考力を身につけていきます。
このような学びを通して、私たちは物事を深く考え、様々な角度から物事を考える力を養います。
教科学習で身につけた力は、社会に出てからの仕事や人脈づくりにも大いに役立つでしょう。
探究学習は人的資本を磨く宝庫
近年は探究学習が積極的に取り入れらています。
探究は自身の興味・関心に基づき、社会課題解決に向けて探究サイクルを回します。
探究学習では、以下のような力を鍛えられます。
問題解決能力・課題発見力・コミュニケーション能力・分析力・創造性・表現力・情報収集力・批判的思考力・メタ認知力(振り返る) など
探究学習は、自分自身で問いを生み出し、それらを解決していく活動です。
その過程では、個人で情報を集めたり実験・検証したりするだけでなく、他者と関わりを持っていくこともあります。
そのため、自分の考えを相手に伝えるスキルも必要でしょう。
そして何より、与えられた学びではなく、目の前の課題を解決するために自分自身で必要な学びを創り獲得していくプロセスです。
このような力は、社会人となって社会課題を解決するための人的資本そのものです。
決められた学習内容(教科学習)と自分で創る学び(探究学習)にバランスよく取り組むことが大切です。
▼教科学習と探究学習の違いはこちらの記事でも紹介しています。
学びに向かう力を鍛える
最後に、大学受験に向けた学びについても、人的資本と関連させて考えてみましょう。
大学受験と人的資本との関係で一番分かりやすい例としては、学歴による生涯賃金の差です。
労働政策研究・研修機構が公表する資料によると、現在もなお大卒の生涯賃金は高いことがわかります。
近年は”良い大学良い就職”の時代は終わりを迎えはじめています。
しかし、大学名が一つの要素であることに変わりはありません。
会社員として給与を上げる点としては、一番分かりやすいのが教科学習による人的資本の強化です。
ただ、受験勉強のためだけに勉強をするのでは、大学で本質的な学びを深められなかったり、社会に出てから生きる力を身につけたりすることはできません。
そのようなこともあり
「大学受験は入学のための勉強」
「受験勉強で入れた知識は、受験以外の場面や将来に役立たない」
などの意見もたまに耳にします。
しかし、受験に向けた学びは、その教科の内容だけでなく受験を通して身につくスキル自体にも価値があります。
上記以外にも挙げようと思うといくつも見つけることができます。
これらは、まさに将来社会を生き抜くために必要な人的資本を高めていることに他なりません。
自律した学習者になることで、生涯学び続ける土台ができます。
高校での学習習慣そのものがトレーニングになっているのですね。
おまけ:人的資本を高める過程で金融資本・社会資本が増えた高校生も!
高校生は人的資本を優先的に高めること、そして人的資本を高めるための考え方がよく分かりました!
最後に人的資本を高めた結果、将来を待たずして高校生の段階で金融資本・社会資本が増えた例も紹介しましょう!
人的資本には爆発力があります。
会社員や公務員として安定した収入を得ることも大切なことですが、起業をしたり副業をしたりすることで、爆発的に収入を増やす人もいます。
そうした中、私自身が知っている高校生でも人的資本を爆発させた例があります。
いずれも探究活動で自分の好きを極めていた生徒です。
- ビジネスコンテストで入賞し、何百万円の賞金を手にした生徒
- 社会課題の解決が多くのメディアに取り上げられ、取材を受けたり講演を行う生徒
この両者は、いずれも人的資本を高めた結果、金融資本と社会資本が成長した例です。
もちろん結果的にそのようになったのであって、初めからねらっていたわけではないでしょう。
教員の手を離れ自分のやりたいことを追求している。
探究心あふれている姿勢が人的資本を伸ばしたのだと思います。
まとめ:学びを深めて人的資本を磨けば世界が広がる
今回の記事では、「なぜ学ぶのか?」のシリーズ第5弾として、幸福を掴むための人的資本に着目して高校生が学校で身につけたい学びを紹介してきました。
幸福のために必要な3つの資本は「金融資本」「人的資本」「社会資本」でした!
その中でも、高校生にとって特に磨いてほしいのが「人的資本」です。
金融資本を増やすためには、自分自身で稼ぐ人的資本が必要です。
資産形成をするにしても、元手を大きくしなければ効率よく資産を増やすことはできません。
また、人とのつながりである社会資本を伸ばすためにも、学びを深めて人的資本を強化する必要があります。
自身の考え方や価値観を成熟させることで、新しい出会いやよりよい人間関係を作るきっかけになるのです。
教科の学習はもちろんのこと、コミュニケーションスキルやチャレンジ精神などの非認知能力も磨くことで、さらに社会資本を高めることができるでしょう。
学校の中と外の両方で学ぶことが大事でしたね。
学校では、教科学習・探究学習・学習に向かうこと事態が人的資本を高められるものでした!
高校の授業では、抽象的で難しい学びを行います。
それ自体が思考力を鍛える訓練になります。
また、粘り強さなども鍛えることもできます。
探究学習では、自分の興味・関心に基づきチャレンジを続ける場です。
その活動の中には、教科の視点が含まれていることはもちろん、挑戦すること・他者との対話・自らの考えを表現するなど、多岐にわたるスキルが磨かれます。
問題解決能力・課題発見力・コミュニケーション能力・分析力・創造性・表現力・情報収集力・批判的思考力・メタ認知力(振り返る) など
このように学校の授業は、その内容だけではなく、学びの過程で得られるスキルが人的資本の形成につながっていくのです。
さらに大学受験を考えている人にとっては、大学受験に向けた学習そのものも隠れたスキルとなっています。
学歴による単純な人的資本の増加、それに伴う金融資本や社会資本の増加もあるでしょう。
しかし、同じ受験を行うなら「受験勉強は大学の入学のため」「社会に出たら大学受験の知識は役に立たない」といった考えではもったいないです。
受験を通して、自律した学習者になることで、生涯学び続ける土台を作ることが人的資本の増加につながるのです。
人的資本を磨くことで、視野が広がり新しい世界に踏み入れることができます。
新しい世界には、新しい出会いがあります。
そのために、ぜひ学びを自分自身で創るとともに、学校での学びも楽しんでいきましょう!
今回の記事が、みなさんの「なぜ学ぶのか?」に少しでも答えられれば嬉しいです。
▼今回の記事に興味を持ってくださった方は、こちらに記事もどうぞ!
勉強のモチベーションがまた下がってきてしまいました…。