「将来どの職業に就きたいかが分からない」
「自分に向いている職業ってなんだろう」
と働くことや将来について不安を抱えている高校生は多いのではないでしょうか。
大学や短大に進学を考えている人は、「就職はまだ先だから」と思っている人もいるかもしれません。
しかし大学生の就職活動は、年々その開始時期が早まってきている現状があります。
今回は、高校生が自身の職業選択を考えるためのきっかけである仕事の広げ方について紹介します。
仕事を広げることで職業への理解が深まることはもちろん、文理選択や進学先の選択なども具体化されていきます。
高校教員として、数学を10年以上教えています。
教科指導外では、総合的な探究の時間やLHRの学習計画を企画・運営し、キャリア教育の推進を行ってきました。
偏差値のみの出口指導ではなく、生徒の興味・関心をもとに「大学で何をしたいか」を考慮した進路指導を心がけています。
目次
職業選択の不安。高校生のうちに少しずつ考えておこう。
将来どのような職業に就きたいのかイマイチわかりません。
そのような高校生は多いですね。
特に進路選択として就職が少ない普通科高校ではなおさらでしょう。
学校の先生は、時期がくれば文理選択を投げかけますし、希望する進路先も聞いてきます。
高校生活の3年間である程度進路を確定しないといけませんから、ある意味仕方のないことです。
ベネッセ教育総合研究所の第4回 大学生の学習・生活実態調査報告書データ集[2021年]によると就職予定者の半数が3年の夏休み前に就職活動を開始しています。
出典:ベネッセ教育総合研究所 第4回 大学生の学習・生活実態調査報告書データ集[2021年] P38
大学の授業は1,2年生が一番忙しく、あっという間に時間は過ぎてしまいます。
大学進学後にじっくり職業について考えようと思っていても、意外とすぐに就職活動の時期がきてしまうのです。
そのようなこともあり、学校側は「職業についての見通しをある程度みなさんに持ってもらいたい」との想いがあるのです。
しかし、自身の進路やその先のキャリアを高校時代にはっきりさせることができる人は多くはありません。
実際、高校時代に全てを決定する必要はありません。
大学時代に学業以外の取り組みにもチャレンジし、自分を見つめ働き方を考えていくことも有効です。
ですから大学時代を有意義に過ごすための土台として、高校時代に自身の関心のある職業を広げておくことが大切なのです。
高校時代に職業の見通しを持つことで
- 大学や学部選びの基準を持つことができ、進学の失敗を減らすことができる
- 大学で0から職業について考えるといったことをなくし、職業選択のためのハードルが下がる
というメリットもあります。
仕事を広げるとは?
仕事を広げてみるって、どういうことでしょうか?
まず一つ目は職業を動詞で考えてみることです!
職業を動詞で考えてみる
例えば医師になりたい人がいたとして、それ以外の可能性を考えたいと思います。
医師以外の医療従事者を考えてみると、看護師・放射線技師・臨床検査技師・理学療法士・言語聴覚士など医療に携わることができる職業はたくさん見つかります。
このように職業を「医師」という名詞で考えるのではく、「医療に携わる」と動詞で考えてみるのです。
そうすると栄養士などの専門職はもちろん、医療事務、医療器具メーカー、薬品メーカー、看護師の人材派遣サービス会社、医療支援団体の職員など専門職以外の職業も多く出てくるのです。
医師や看護師、弁護士、教師などの専門職はわかりやすいけど、関心のある職業名がこれと言ってありません…。
そのような場合には、自身の興味・関心から職業を広げていくのがよいでしょう。
興味・関心から職業を広げる
例えば次の図を見てください。
出典:16歳からの仕事塾 高校生と親・先生のためのキャリアデザイン P155 をもとに筆者作成
図のように好きなもの「サッカー」への関わり方を考え出し、そのカテゴリーごとに職業を見つけていくのです。
サッカー好きの小学生に夢を聞けば、サッカー選手が出てくるでしょう。
高校生になったいま、サッカー選手を目指せる人は現実的には少数です。
でも大好きな分野からに関わる場所で社会に貢献することは可能なのです。
夢や理想を持ちながら、いま目の前の進路について考えていくことが高校生の時期なのです。
仕事を広げてみよう
実際にみなさんの場合で仕事を広げてみましょう!
興味・関心から仕事を広げる手順は以下の通りです。
まずは自身の興味・関心のあるものをいくつか挙げてみましょう。
スポーツ、マンガ、音楽など趣味の要素が入っているものでもよいでしょう。
好きな科目として英語や数学などでもよいかもしれません。
いくつか候補が出たら、その中から一番興味・関心の強いもの、または関わり方が広がりそうなものをひとつ選びます。
次に興味・関心に「どのような関わり方かできるか」をできるだけ多く挙げてみましょう。
例えば先ほど紹介した内容で言えば、
〇〇を教える人、〇〇を楽しむ場を提供する人、〇〇を紹介する人、〇〇を応援する人、〇〇のグッズを販売する人、〇〇を運営する人などです。
他にも、〇〇を支える人、〇〇と一緒に働く人、〇〇と似ている仕事、〇〇を作る人なども考えられます。
興味・関心のキーワードごとに関わり方は違うから、少し難しいかも。
関わり方を考えるステップこそが、仕事を広げるための一番重要な部分なのでじっくり考えてみましょう!
関わり方を考えるステップは、みなさん自身の働き方を見つけていくために、自分の頭で絞り出すことが大切です。
サッカーの例も参考に、じっくり取り組んでみましょう。
最後に関わり方から職業を探していきます。
上図のように、一つの関わり方に対して複数の職業が見つかるはずです。
ここまで仕事を広げてみると、当初は考えもしなかった職業が見えてくるでしょう。
なかなか職業が出てこないときには?
自分で考えてみると色々な職業が出てきました。
でも自分では思いつかない職業や働き方がまだありそう…。
職業を広げてみると、具体的な関わり方や職業名が出てこない人もいるかもしれません。
そのようなときは、書籍やネットで探してみてもよいでしょう。
また、多くの職業に自らの体験を通して出会うことも有効です。
書籍で探す
書籍で探す場合には、仕事図鑑を見てみるとよいでしょう。
多くのものは小学校または中学校向けで、高校生向けとして出版されているものはおそらくありません。
しかし、高校生が見ても十分価値のある内容になっています。
私の経験から見ても、小・中学校の時期にキャリア教育の中で仕事について考える経験をせずに高校まで来ている人も少なくありません。
キャリア教育に熱心な学校は、図書館や高学年の教室に、何種類もの仕事図鑑を置いて自由に見られるようにしているところもあります。
言われてみれば置いてあったかもしれないけど、今まで見たことがありませんでした。
学びに年齢は関係ありません。
何ごとも自分に足りない部分を感じたら、基本に立ち返って始めてみればよいのです。
いくつか仕事図鑑を紹介します。
厚さもあり高価な書籍ですので、書店で簡単に目を通してから気になるものを購入するとよいと思います。
最近では新しい職業がどんどん生まれ、無くなっていく職業もあります。
ですから、できるだけ出版が新しいものを紹介しました。
「13歳のハローワーク」については、当時かなりのブームになっていましたから少し古いですが紹介に加えました。
また学校向け・授業用の書籍も紹介しておきます。
高価であることと書店では扱っていない可能性がありますので、学校または地域の図書館などで読んでみるのがよいかもしれません。
こちらはジャンルごとの分冊になっていますので、特定の分野を知りたい方にオススメです。
最後に、就職活動をはじめる大学生や大人向けのものを紹介します。
「小・中学生向けは物足りない」という人は、業界・職種ガイドに目を通してみると新しい発見があるかもしれません。
色々な本があるんですね。迷っちゃうなぁ。
まずは手にとって、パラパラっと見てみましょう。
ネットで探す
「近くの書店や図書館に欲しい本が置いていない」
「高価だし、ネットで買うのはちょっと」
という人には、Webサイトで仕事を探してみましょう。
Edu Town あしたねでは、職業名から検索ができることはもちろん、好き・興味から検索ができることが魅力です。
業界や人気度から検索することもできます。
職業人へのインタビュー記事もあるので、そちらも参考になります。
Benesseのマナビジョンは学校でも使っていることが多いでしょう。
こちらは分野ごとに検索ができ、それぞれの職業について「なるためのプロセス」「資格」「上級学校の紹介」など、進路要素がつよいのが特徴です。
簡単な職業適正診断を行うこともできます。
職業との出会いを増やす
最後は実際に職業人と出会うことです。
書籍やネットでは、たくさんの仕事を一度に知ることができます。
ただその職業の詳細については、簡単な説明があるだけです。
インタビュー記事では、もう少し詳しく知ることができますが、やはり限りがあります。
自分自身で直接見たり聞いたりする学びの大きさには勝てません。
そのため学校では、インターンシップや職業人講話などをカリキュラムの中に入れているのです。
このような学校行事はきっかけとしての効果は高いと思いますが、生徒一人ひとりの希望にマッチングしているかを考えると課題は残ります。
ですから最近は、自分が話を聞きたい職業人に自らアポイントメントをとってインタビューをする活動を行っている学校もあります。
実際にインタビューができたら、自分が知りたいことを詳しく調べることができそう!
自分でインタビューを勝ち取って、質問を作る、質問をすることは、みなさんのスキルアップにもつながります。
高校生が職業人にインタビューをする様子は、NHK高校講座でも動画が配信されていますので参考にどうぞ。
そうは言っても
「学校の後ろ盾がないと」
「個人でアポイントメントは厳しいよ」
という人もいるかもしれません。
そのような場合は、社会と関わる機会を増やすことがを意識して生活してみましょう。
趣味でも、遊びでも、旅行でも、様々な場に行けばそこで働く人を目にします。
例えば、サッカーが好きならテレビ中継だけでなく、実際にサッカーの試合を見にいきましょう。
現地に行けば、自然とテレビでは見えない光景が目に入ってきます。
選手を支えるトレーナー、端末を片手に試合を分析している人、会場を整備したり運営したりしている人、グッズを販売している人、スタジアムに掲示されているスポンサー企業など。
難しく考えなくても、日常で少し気を配るだけでいろいろな職業が目に入ってくるはずです。
まずは日常の中から職業へのセンサーを働かせてみてください。
次のステップとして、ボランティアなど課外活動ができれれば、そこで知り合った大人に職業について尋ねてみることもできます。
これも立派なインタビューです。
少しずつ挑戦してみるとよいでしょう。
まとめ:職業を広げて可能性を広げよう
今回は、興味・関心から職業を広げる方法について紹介してきました。
なりたい職業が見つからない高校生は意外と多く、特に普通科高校では職業について考える機会を学校があまり提供しません。
大学や短大に進学し、視野を広げることで職業を見つけていくことも大変よいことですが、就職活動までの時間は意外と短いです。
そのため高校時代に、職業について考える時間をとっておきましょう。
特に高校では仕事を広げておくことが有効です。
そうすれば大学生活を有意義に過ごせ、就職活動への準備もしやすくなります。
職業を広げることで、選択肢や可能性を広げましょう。
みなさんが職業について自己分析を行い、それらが文理選択や進学先の選択に少しでも役に立てば嬉しいです。