効果的に活用しなければ、教員だけでなく生徒にとっても負担が大きいですよね。
多くの学校で行われている授業評価アンケート。
年に1、2回行われ、生徒が自身の授業への取り組みを評価したり、教員の授業形態への満足度を評価したりしますよね。
多くの現場では、形骸化してしまい「とりあえず毎年行う」「やらされているもので授業改善に役立っていない」などの課題も多いでしょう。
今回は、業務負担にも感じられる「授業評価アンケート」を効果的に活用するヒントについて紹介します。
生徒の時間をもらって行うアンケート。
同じ行うなら、意味のあるものにしたいですよね。
効果的なアンケートは、自身の授業力向上にもつながります。
そのためのポイントは
事前に項目を把握すること
アンケートを実施するときに初めて項目を知るのではなく、事前に項目をもとに授業を組み立てることが大切です。
事前(項目確認)→実践(授業)→事後(振り返り)
上記のサイクルで授業改善を進めていきましょう。
効果的な活用法を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
高校の数学教員として10年以上授業を行っています。
ただ学習内容を教えるのではなく、「学び方を教える」をモットーに授業作りをしています。
授業評価アンケートの項目変更に携わるほか、自身でも独自にアンケートを実施することで、日々の授業改善を進めています。
目次
授業評価をうまく扱えていない学校が多い?
授業評価アンケートって、やりっぱなしなイメージです。
「結果が配られてお終い」なんて学校もあるのではないでしょうか?
授業評価アンケートが形骸化している学校は少なくありません。
年に1,2回、時期が来ると生徒にアンケートを取り、それらを担当の先生が集計し管理職から結果が渡される。
このような流れが機械的に行われている場合も多いです。
「授業評価をしなければならないから実施している」などの目的のないアンケートでは、本来の効果が発揮されることはありません。
また、職員が意味を感じないものは形骸化しやすく、負担感も多いものです。
職員室を見渡せば、
「生徒に甘くすれば評価はあがる」
「こんな項目は意味がない」
などと、結果や評価活動自体に批判を投じる方も少なからずいます。
これらは、効果的に授業評価アンケートが活用できていないからに他なりません。
そのような学校では、課題として
- 教員自体が授業評価アンケートに前向きではない。
- 学校として評価項目が練られていない。
などが挙げられます。
例えば、生徒の主体的な学びの実現を学校が目指しているのに、
「授業担当者の説明がわかりやすい」
「課題に適切に取り組んでいる」
などの項目では、目的を達成するための項目となっていません。
一方で
「自分で計画的に学習を考え振り返ることができている」
「他者の意見をもとに学習を深める時間が取られている」
という項目であれば、学校の目標を反映した授業になりそうです。
アンケート項目は、学校・管理職のビジョンそのものです。
そうすることで、教員の授業評価アンケートへの姿勢も変わってきます。
その結果、アンケート結果が自分自身の振り返りとなり、授業改善につながっていくのです。
授業評価を効果的に活用するサイクル
ここからは、授業評価アンケートを効果的に活用するための具体的なポイントを見ていきましょう!
4,5月の段階で項目を見る
まず、年度初めに必ずアンケート項目を確認しましょう。
学校が何を目指しているのかを把握するのです。
- 対話的な学びを重視しているなら、協働学習の場面を設定する。
- 自律した学びであれば、自己調整学習の取り組みを入れてみる。
- 基礎・基本の徹底であれば、適応問題や成績に入れない豆テストを入れてみる。
- ICT活用なら、生徒が学習端末を積極的に活用する授業を計画する。
など、いろいろと工夫が見えてきます。
「自分のやりたいこと」と「学校が目指すところ」
この2つが一致していることで、授業にやりがいが生まれ、働きやすい環境にもつながっていきます。
いままでアンケートを取るとき、結果が返ってくるときに初めて項目を見ていました。
それでは遅いのですね…。
自己評価シートと関連付ける
1年間の授業方法や目標を立てるために、授業評価アンケートに関連する内容を「自己評価シート」にも取り入れましょう。
名称は自治体によって様々ですが、人事評価のために毎年提出する用紙のことです。
各都道府県の取り組みは、こちらの資料を参考にどうぞ。
人事評価システムの取組状況(教諭等に対する評価)(令和5年10月1日現在)(文部科学省)
自己評価シートでは、年度当初に目標や手立てを記入し、年度末に自己評価をします。
こちらも業務負担の観点からあまり好まない先生方も多いでしょう。
やはり、やらされている感があると、形骸化して負担感も多いのではないでしょうか。
こちらも、意識によって自分の職能成長につなげることができます。
自己評価シートは、例年同じことを書くのでは成長につながりません。
毎年どのような取り組みを実施していくのかを明確にし、それらを記載していきましょう。
そして、管理職との対話を進めていくことで具体化していきます。
学校が目指すところをしっかり押さえることで、よりよい授業を設計していくことが大切です。
ここで参考になるのが、授業評価アンケートです。
年度当初にアンケート項目を把握することで、目指すべき授業方法や目標が具体化されていきます。
このように授業評価アンケートと組み合わせることで、自己評価シートも意味のある取り組みに変わっていきます。
そうすることで、負担感も減りますし、結果ポジティブな評価へもつながるのです。
同じ行うなら、生徒の成長につながり、自身の職能成長にも結びつくよう実施していきましょう。
結果をもとに授業改善を行う
最後に授業評価アンケートを自分自身の振り返りに活用することです。
「指導と評価の一体化」には、生徒の形成的評価の面と教員の指導改善の面があります。
授業評価アンケートは、まさに自分の指導を自分自身で評価していくものです。
「生徒が自分の授業をどのように受け止めているのか」
事実を見つめ評価することで、さらに授業改善を進めていく。
その結果、自分よがりの授業ではない、時代に即した授業に近づけていくことができます。
これは決して生徒に迎合するということではありません。
目の前の生徒の実態に合わせた、本当に生徒の成長につながる授業になっているかを考えるためのものです。
さきに紹介したように、職員室の中には授業評価に無意味さを訴える人もいます。
しかし、意味のあるものにするかは本人次第です。
意味のないものを生徒にやらせてはいけません。
生徒の時間をもらって実施する以上、アンケートは意味のあるものにしなければなりません。
そして、その結果を生徒に還元すべきでしょう。
業務を意味あるものに変えられる人は、それらを自身のスキルアップにもつなげられる人でもあります。
もらって終わりではなく、自分の授業改善に活かしていきます!
自分で項目を作ってもよい
最後に「学校の授業アンケート項目がいまいち…」と感じている人に向けて、自分自身でアンケートを実施することをおすすめします!
管理職をはじめ、教務部や研修係などがアンケート項目をつくる学校もあるでしょう。
項目がこれからの時代に求められる授業力を反映したものになっていれば、それらを活用して授業スキルを高めていけば大丈夫です。
一方で、学校の設定する項目がこれからの教育とズレていると感じている先生方も多いと思います。
特に高校では、知識詰め込み型の授業、大学受験の出口しか見ていない授業も未だに多いです。
そのようなときは、自分自身で項目をつくり振り返りを行うのも一つの手です。
分掌の立場によっては、自身で項目を変えることもできます。
しかし、学校の授業評価アンケートを作成する立場にない人のほうが多いでしょう。
私自身、分掌の先生方とチームでこれからの時代に応じた授業となるよう項目を変えたことがあります。
アンケート項目を変えたとしても、管理職の変更と同時に旧来型の授業観のアンケートに戻ってしまった経験もあります。
そこで、自分の授業の中で完結する簡単なアンケートを自分自身で実施することがおすすめです!
自分の授業の目的やねらいをダイレクトに評価してもらい、振り返りが行えるので授業改善には最適な手法です。
ポイントとしては以下に気をつけるとよいです。
学校の授業評価アンケートもありますから、生徒がアンケート漬けにならないよう項目は精選する必要があります。
特に自身が目指す授業の目標達成度や手立ての良し悪しを評価できる項目を作成するとよいでしょう。
その際、学校の設定する育てたい生徒像を意識することで、学校全体をよりよくする視点にもつながります。
また、指導と評価の一体化を意識することも大切です。
指導していないことを評価の対象にはできません。
さらに、自分が1年間行っていく予定の授業の進め方など、マインドを事前に生徒に伝えておくことも重要です。
授業のねらいや取り組み方を生徒が理解せずに漠然と授業を受けている状態でアンケートを行っても、生徒は上手く評価をすることができません。
生徒と一緒に授業を創り上げるために、授業概要を事前に説明し、その授業が実現されたかを評価してもらう。
そうすることで生徒自身も学びの振り返りになりますし、教員にとっても有意義なアンケートとなります。
生徒の振り返りも兼ねて行えば、一石二鳥ですね!
まとめ:授業評価アンケートは事前・実践・事後の活用を!
今回の記事では、授業評価アンケートを効果的に活用する方法として、年度当初の項目確認を中心に活用方法を紹介してきました。
評価といえば、一番馴染みがあるのが生徒への評価です。
生徒の評価をする際に、
「とりあえず授業を進めて、テストをして、その結果を見て評価する」
これは適切な評価とは言えません。
上記のような流れで評価を行うからこそ、基準も明確で生徒も学びの振り返りができます。
教員自身の授業評価も全く同じです。
これでは授業評価の意味がありません。
これらのポイントを押さえることで、授業スキルの向上につながり、生徒の実態に応じた実践が充実していきます。
ここまで行っていれば、アンケート結果を効果的に活用できますし、そもそも悪い結果は返ってきません。
授業評価アンケートを効果的に活用することで、生徒の学びを深めるための授業を振り返り、よりよい授業へ発展させていきたいですね。
また、学校のアンケート項目が不十分であれば、自身で項目を作成し実施することもおすすめです。
ぜひ、自身の職能成長に向けて授業評価アンケートを活用してみましょう!
今回の記事が先生方の楽しい授業づくりに一役買えれば嬉しいです。
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授業評価アンケートを毎年実施していますが、負担ばかりであまり効果的に活用できていません。