日々変化し、新しいものが降りてくる教育現場。
「次から次へとついていけない…」
「校長からの一方的な指示にイマイチやる気が出ない」
なんて先生も多いのではないでしょうか。
人から強制されて取り組む教育活動ほどつまらないものはありません。
どうせなら自分でその価値を判断し、生徒のために仕事をしたいものです。
今回は教育の最新動向について、自分自身で情報を取りに行くための方法を紹介します。
「これからの教職生活を前向きに取り組みたい!」
という方はぜひ読んでみてください。
高校教員として、数学を10年以上教えています。
内容をただ教え込むのではなく、「数学の学び方を教える」をモットーに授業を実施しています。
毎年目標を決めて授業改善・教育活動にあたることで、教師としての資質・能力の向上を目指しています。
目次
日々変化する学校教育
校長が職員会議で、society5.0やVUCA時代とか新しい用語をいっぱい出してきて追いつきません…。
近年の教育現場では、社会の変化によって生じた新たな教育課題の解決が求められるようになってきています。
高校現場において一昔前までは、より偏差値の高い大学に進学させること、就職先を確保することが最重要課題でした。
しかし現在では、さまざまな場面で資質・能力の育成が騒がれています。
令和4年度からは文科省の提示する資質・能力として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学びに取り組む態度」の観点別評価が導入されました。
他にも「キー・コンピテンシー」や「エージェンシー」、「21世紀型スキル」など、資質・能力の育成が重要視されています。
このような背景から、「従来の単純な知識詰め込み型の授業ではいけない」ということになってきたわけですね。
そして教育改革が進む中で授業方法や教育活動も大きく変わってきました。
数えればキリがないほど、学校現場には新たな要求と課題が突きつけられます。
一方、社会全体で働き方改革が認知され、教員の労働条件についても世間の注目が向かうようになりました。
そのような中で、過度な要求に疑問を持つことはもちろん必要ですが、
常に変化し続ける社会に対応するために、新たな教育課題に取り組もうとする姿勢は大切です。
これからの未来を生きていく生徒たちに社会を生き抜く力をつけてもらうことは、教師や学校としての役目ではないでしょうか。
スキップはきつい?教師が学び続けなければならない理由
これは教師も学ばないと新しい教育についていけなくなりそう…。
生徒によりよい教育活動を提供するためには、学び続ける教師は必須です。
学校現場は年度単位で動くため、ある程度1年間の見通しが立ちます。
生徒が入れ替わっても、「学習内容は同じだから」と言って例年通りのやり方を繰り返しがちなのです。
しかし毎年少しずつ生徒の特徴は異なりますし、求められる教育も変化していきます。
塵も積もればで、気づいたときには教師としての専門性が欠け、手遅れになってしまうこともあるのです。
社会が進んでいくなか変化をしないことは、もはや後退と同じです。
一度学ぶことを諦めてしまうと、取り返えすのに大変な時間がかかります。
例えば:技術の遅れ
例として、一人一台端末を用いた授業を考えてみましょう。
生徒に端末を配ったものの、それらを活用して授業をしている先生はどのくらいいるでしょうか。
高校現場では「使うことが目的となっている」という問題よりも、「使う気すらない先生がいる」の方が課題な気がします。
その背景には、教師自身がICTを使って授業をしてこなかったことが原因の一つです。
これまで積極的にICTを活用してきた先生もいます。
このような取り組みを生徒自身が行ったり、新たに協働学習に活用したりするなど、これからは「ICTを生徒に活用させていこう」となったわけです。
でも、そもそも教師自身がICTの使い方がわからない。
その結果「ICTなんて効果はないよ」と変換してしまう。
長らく知識を伝達することが教師の仕事のメインでしたので、自分が知らないもの・わからないものを生徒にやらせたくない傾向があるのです。
「教師がICTを使う」というステップを飛ばしたために、「生徒にICTを効果的に使わせる」ことができないのです。
例えば:制度の変更
もう一つ、「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業と観点別評価について考えてみます。
令和4年度より、高校においても観点別評価が取り入れられました。
指導と評価の一体化という言葉も今ではよく耳にします。
「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申) 文部科学省
つまり、生徒に身に付けさせたい資質・能力を意識した上で授業を行い、それらを評価する。
逆を言えば、指導していないもの評価をしてはいけない、ということです。
そう考えると、チョーク&トークの一方的な知識詰め込み型授業では、「知識(・技能)」が評価のほとんど占めるということです。
結果ペーパーテストのみで、総括的評価のみ行っているわけです。
ここに観点別評価が導入されたことにより、「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学びに取り組む態度」も評価することになりました。
したがって、これからは授業内で3観点を身に付けることができる活動を計画的に行わないといけないのです。
生徒が発表をする、協働して学ぶ、振り返りをするなどですね。
探究的な課題やパフォーマンス課題を出してみたり、自己調整学習を促す宿題に変更したりすることも考えられます。
この10年間でアクティブラーニングに始まり、大学入試改革や主対的・対話的で深い学びを実現するため授業改善など散々言われてきました。
これまで何となくやり過ごしてきた人にとって、観点別評価の導入は相当な負担であると思います。
ここでも授業改善をスキップしてしまったことが、観点別評価をさらに難しいものにしているのです。
でも毎日の業務が忙しく、正直なところ新しいことに取り組むのが大変で…。
毎年ちょっとした改善に1つだけ取り組むだけで十分です。
最初の段階で少し挑戦してみることは、それほど大きな負担ではないと思います。
先延ばしにして、後でまとめて降りかかる方が恐ろしいですよね。
毎年の自己評価も、このような視点で取り組むと上手く活用できますし、必ず管理職はみてくれているものです。
教育の最新動向を確認しよう
新しい教育活動に挑戦するためには、まずは情報を手にいれることが肝心です。
授業改善をはじめ探究活動やキャリア教育など、「文科省が言ってるから」「校長がやれって言うから」という場面をよく目にしませんか?
実際、このように人から半強制的にやれと言われると、何事もやる気は起きないものです。
だからこそ、教育の最新動向は自分で取りに行きましょう!
自分がよいと思った活動を自分なりに工夫できる、仕事を自分で作れることが教師の魅力ですよね。
中教審の答申を読む
ここから教育の最新動向の取り方を5つ紹介していきますね。
まずは中央教育審議会による答申を読むことです。
中教審の答申は、学習指導要領の改訂に大きく関わります。
私たち現場からすれば、まさに教育の変化のスタートとも言えるものです。
文量が多く、読むのが大変ですが、時間を見つけて目を通してみましょう。
答申は本文と概要がセットで示されます。
まずは概要をつかみ、時間を見つけて本文を読んでみるのもよいでしょう。
最近のものだと、令和3年4月22日付「令和の日本型学校教育」はぜひ見ておきましょう。
学習指導要領解説を読み込む
実は学習指導要領解説って、ざっとしか見たことがありません…。
少し古い調査ですが、2010年に国立教育政策研究所から公表された「校内研究等の実施状況に関する調査」によると、高校は義務教育に比べて校内研修の機会が少ないことが指摘されています。
国立教育政策研究所(2010).校内研究等の実施状況に関する調査 P4
私自身の感覚では、現在もあまり変化は見られません。
高校では指導案を書く機会も少ないですし、定期的に研究が回ってきたり指導主事が訪問したりすることも小中学校と比べて少ないでしょう。
また教科としての専門性は強いですから、「指導要領をあまり読まずに教科書があれば授業ができる」なんて状態の人も少なくありません。
学習指導要領に記載されているものは、教科の内容だけでなく、改訂にいたった社会的な背景や考え方も細かく記載されています。
何を教えるかという教科の内容や系統性だけでなく、教育活動全体を捉えることで自身の授業づくりが変わってきます。
10年に一度のアップデートですから、しっかり読み込みたいですね。
また学習指導要領解説は、完全実施の2〜3年前には告示されますから、余裕を持って教育活動に反映させていきましょう。
手元にない方は文科省のHPでPDFをダウンロードできます。
雑誌を購読する
他校の実践を知ることも効果的です!
雑誌は書籍と異なり情報が早いです。
ある程度時間が経てば多くの実践が積み上がり、書籍化される学校もあるでしょう。
雑誌は先進的な取り組みや興味深い実践を行う学校が掲載されることが多いですから、早い段階で他校の実践を知るにはおすすめです。
例えば、
探究活動で有名な京都市立堀川高校は、1999年から探究活動に取り組んでいます。
学習学習指導要領(平成30年度告示)により、「総合的な探究の時間」が先行実施されたのは2019年です。
先進校の情報を得ておくことは、新しい教育活動を考える上できっと参考になります。
VIEW next と キャリアガイダンス は、学校にも何部か届きますね。
オンラインでは、PDFのバックナンバーが読めるのでおすすめです。
特に VIEW next は「教育委員会版」があり、学校に届く「高校版」と異なるので、ぜひ読んでほしいと思います。
教育関連の記事に目を通す
文科省の動きなど、教育関連ニュースを知ることも欠かせません。
ニュースや新聞は、教育全般の情報を得るの役立ちます。
法案や文科省の動き、裁判の判決、部活動問題、いじめの問題など、教育時事を知っておくことも大切でしょう。
どちらもオンライン版がありますので、アプリの使いやすさや取り上げる記事の内容で選んでみるとよいでしょう。
私は教育新聞を利用しています。
教育新聞は、Zoomでオンラインセミナーを開催することがあり、著名な方の話を気軽に耳だけ参加することもできます。
日本教育新聞は、管理職試験向けの記事が多いようです。
中にはどちらも購読している方もいるようです。
指導主事や大学教授が招かれる研修に参加する
最後は校外の研修に参加することです。
指導主事の仕事として、現場への教育情勢の伝達があります。
指導主事とは、学校の営む教育活動自体の適正・活発な進行を促進するため、校長及び教員に助言と指導を与えることを職務として教育委員会事務局に置かれる職。教育課程、学習指導、生徒指導、教材、学校の組織編制その他学校教育の専門的事項の指導に関する職務を行う。
指導主事等の配置状況について 文部科学省
伺った話では、学習指導要領が新しくなれば、学習のための出張もあるようです。
ですから、公開研修会などで指導主事が講評をするときは、授業の内容以外に必ず近年の教育の流れや在り方についての話があると思います。
このような場に出かける際には、少し注意をして指導主事の話を聞いてみるといいかもしれません。
また公開研究会などでは、大学教授の講話が用意されている場合があります。
研究の最前線を歩んでいる方のお話ですから、こちらも教育の最新動向をつかむ上では大変役立ちます。
確かに指導・助言者からの話は、学びになります。
でも、そこまで頻繁に研修の機会がないかも…。
研修の機会が少ない人は、NITSが提供する校内研修動画も活用してみてください。
NITS(教職員支援機構)とは、教育委員会などから推薦をもらった全国の先生方が参加する中央研修を実施している組織です。
研修自体は誰もが参加できるものではないのですが、校内研修用として一部動画をアップロードしてくれています。
最新の教育動向を把握するための代表的なキーワードについて、概要をつかむことができます。
まとめ:教育の動向をチェックし実践に活かそう
今回は「最新の教育活動へのアンテナの張り方」として5つの方法を紹介しました。
まずは教育の変化のスタートとも言える「答申」を読むことです。
ここをしっかり読めば、いち早く今後の教育について掴むことができます。
答申の結果を受けて学習指導要領の改訂に動きますから、学習指導要領が告示されたら全面実施の前に余裕を持って目を通しましょう。
先進校の情報を知りたければ、雑誌の購読がおすすめです。
ご自身の学校にも取り入れられる実践を見つけられるでしょう。
教育時事について知る場合には、教育系の新聞・ニュースで教育に特化された記事を読みましょう。
文科省の動きや法案、裁判の判決などをはじめ、教育の諸課題にいち早く触れることができます。
最後に、研修に参加することも教育の動向を知るよい機会です。
研修自体が学びですし、指導主事や大学教授など教育の最先端にいる方の話を聞く機会が持てれば学びがさらに深まります。
研修の機会がなかなか得られない場合は、NITS(教職員支援機構)が配信する校内研修シリーズの動画もおすすめです。
これからの教育は常に変化を続けるでしょう。
その変化は、これまでの変化に上乗せされた形で更新していくものです。
一つの課題を後回しにしてスキップをしてしまうと、取り戻すための労力は相当なものです。
日々の業務が忙しいですが、専門職として学び続ける教師を目指したいものです。
今回の記事が、これから教職を始める先生方、さらに学びを深めたい先生方の教育実践に少しでも役立てば幸いです。
研修など学校外での学びについては、以下の記事でも紹介しています。
ぜひご覧ください。