やりっぱなしにせず、生徒の振り返りを参考に教育活動を改善する姿勢は大切ですね!
みなさんが日々実践されている教育活動。
学期や年間を通しての振り返りは実施されているでしょうか?
生徒の成長につながると信じて実施した教育活動は、上手くいったり改善点があったりと自分自身の中で振り返ることは多いかと思います。
しかし、実際にその活動に取り組んだ生徒の声まで拾っている学校は少ないでしょう。
中には、生徒の感想をアンケート形式で集めている学校もあると思います。
それ自体は、実践の振り返りとして大切なことです。
ただ、本当に生徒の成長を見ることができるのは、ワークシートなどの成果物やポートフォリオです。
学習活動を通して得られた生徒の学びの視点を活用することで、教育活動の効果をより具体的に検証していくことができるのです。
でも実際に行おうとすると、手書きのワークシートを分析するって大変な労力がかかりますよね。
そこで今回の記事では、生徒のワークシートをChatGPTを用いて簡単にデジタル化し、分析に使えるよう整理する方法を紹介します。
この方法を使えば、日々の業務が忙しい中でも、生徒の成長の過程をしっかりと分析し今後の教育活動に活かしていくことができます。
これから必須となる生成AIを活用していくスキル。
そのような視点で見ていただいても面白いと思いますで、ぜひ最後までご覧ください。
高校の数学教員として10年以上教職に携わる。
内容を教えるのではなく、学び方を教えるをモットーに授業を展開。
理論と実践の往還を意識した教育実践を心がけ、生徒の声を活かした教育活動を模索し続けている。
目次
質的データの必要性
学校では、日々さまざまな教育活動を行っています。
もちろん教員側は、生徒の成長につながると信じて実践をしています。
しかし、それらを振り返り、次の実践に活かそうとする姿勢はあまりみられません。
実際のところ、実践者の感覚のみで「うまくいった」「うまくいかなかった」を判断してしまうことが多いのではないでしょうか。
これだけでは、教育活動が効果的なものであったかを検証するには不十分です。
「生徒の学びがどのように変化をしたのか。」
生徒自身の言葉から分析する必要があります。
実践の検証を行う際には、大きく分けて「量的データ」と「質的データ」があります。
量的データとは、「Q . 単元の学習内容はどのくらい身につきましたか」などの質問に対して、
「5よくできた」「4できた」「3どちらでもない」「2あまりできなかった」「1できなかった」
などから選択をしてもらい、その数値を統計的に処理していくものです。
▼量的データによる分析方法については、以下の記事でも紹介しています。
一方で、質的データの分析では、自由記述やインタビューをまとめたものを分析します。
例えば、記述内容自体から生徒の成長を読み取ったり、テキストマイニングを活用して頻繁に出てくる言葉や関連性を調べたりします。
質的データをとることで、量的データだけでは分析できない生徒の学びの様子を知ることができます。
結果、「自身の実践や学校の教育活動が本当に生徒の成長につながっているのか」を客観的に評価できるのです。
質的データは、アナログがよいこともある
テキストマイニングの処理を行ったり、データを保存したりするなら、デジタルで入力してもらった方がよいのでしょうか?
もちろんデジタルであれば、分析は楽ですね。
でも生徒の学習の深まりを考えると、アナログがよい場合もありますよ!
例えば、質的データとして活用しやすいのが、生徒の振り返りです。
振り返りには、学びの様子が書かれているので、そちらを教員自身の振り返りに使わない手はありません。
私自身は、振り返りを書かせる際に大事にしている視点があります。
それは
「振り返りを書くのではなく、書くことで振り返れる」
という視点です。
コンピュータでは、すでに頭の中にあるものを打ち出していくイメージが強いです。
そのため、慣れていないと稚拙な文章になりがちで、振り返りが深まらないこともあります。
一方で、OPP(One Page Portfolio)のようなワークシートを活用している場合、全体が構造化されていることで、学びの過程が振り返りやすくなることもあります。
▼OPPA(One Page Portfolio Assessment)については、こちらの記事でも紹介しています。
ワークシートは、1時間の内容や単元の内容が一枚にまとまっているからこその利点があります。
また、「自分の考え」「他者の考え」「振り返り」が一枚にまとまっているワークシートなども考えられるでしょう。
これは、アナログの最大のよさです。
ドキュメントやスライドなどを用いてもよいですが、高校生にとっては保存が煩雑になるデメリットもあります。
デジタルを知っているからこそ、アナログの教育効果も大事という視点ですね。
二項対立ではなく、どちらのよさも活かしていきましょう!
実際にデータをデジタル化してみる
少し話がズレてしまいました。
ここからが本題です。
アナログで書いてもらった質的データをChatGPTを用いてデジタル化するのですね!
ChatGPT-4oのOCR機能を活用する
ChatGPTのアップデート(2024/5/13)により、画像認識機能(OCR)の性能が格段に上昇しました。
さらに、こちらの機能を無料ユーザーも使えるようになりました。
OCRとは、手書きや印刷された文字をカメラで読み取り、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術のことです。
ChatGPT-4oを用いることで、生徒の手書きワークシートを簡単にデジタル化することができます。
これまでもGoogleドキュメントを利用することで、デジタル化はできました。
しかし精度が低いのと、複数ある枠を認識できず、ただ文字をデジタルにすることしかできませんでした。
ChatGPTを使えば、枠を認識し設問ごとに最適化した形で手書き文章をデジタル化してくれます。
本記事執筆(2024年7月)の段階では、多少の変換ミスはありますが、ほぼ正確に読み取られ十分な精度です。
実際にOCR機能を試してみよう
それでは実際にChatGPTを利用して、生徒のワークシートをデジタル化してみましょう。
今回はOPPシートをデジタル化してみます。
本記事用に作成したワークシートですので、内容は適当です…。
以下のjpg画像が、手書きで書いた原本をスキャナで取り込んだものです。
ChatGPTの精度を調べるために、やや殴り書きで書いてみました。
1つ目の図はキャリア教育、2つ目の図は数学の授業をイメージしています。
ChatGPT-4oに読み込ませてみましょう。
↑1枚画像をつけて、OCR処理の指示を出しました。
↑99%正確に読み取れています。
自動で項目を認識し、(1)〜(3)まで分けて処理してくれています。
これが生成AIのすごいところです!
↑生徒は一人ではありませんから、2枚同時に処理してもらいましょう。
↑1枚目が処理されました。
↑続けて2枚目も連続して処理してくれます。
一度に複数人処理できれば、効率が圧倒的によくなりますね!
↑分析に使いたいのは、生徒ごとではなく項目ごとです。
(1)(2)(3)ごとに並べ替えるよう指示してみます。
↑見事に並び替えてくれました。
これをコピーすれば、簡単に質的データの分析ができます。
そのまま分析をかけてみる
データをChatGPTに読み込ませたら、そのまま分析をかけることもできます。
日々の実践の振り返りであれば、自分自身が振り返れればよいので、ChatGPTによる分析で十分よい効果検証ができます。
先ほどのチャットの続きに「ワークシートの分析」をお願いしてみましょう。
↑内容をそれぞれ分析してくれています。
今回は、キャリア教育と数学の異なるワークシートを読み込ませたので、あまり正確ではありません。
実際には、同じテーマのワークシートを何十人分と入れるので、かなり充実した分析となります。
データ読み込みの際の注意点
以上のようにChatGPTを活用することで、簡単に生徒のワークシートをデジタル化することができます。
しかし、注意点もありますので、そちらにも触れておきます。
個人情報の取り扱い
ChatGPTには、読み込んだデータをサーバに残さない「シークレットモード」があります。
しかし、ネット上に個人情報をアップロードするわけですから注意が必要です。
例えば
などの工夫をしておきましょう。
基本的には信頼できるサービスですが、何が起こるかはわかりません。
教職公務員としての信用失墜とならないよう、自分の身を守るためにも個人情報の扱いには十分注意しましょう。
本格的な論文への利用
これまで学術的な論文を書く場合には、外注をして文字起こしをしてもらうことが一般的でした。
ChatGPTでの処理はかなり高い精度であるものの、若干の読み間違えもあります。
人間がすべて確認をするわけではないので、学術的な論文に使用することは、現段階で疑問視されることもあるかもしれません。
助成金で義務付けられた研究報告書や自治体に提出する報告書などであれば、注意書きとして「生徒手書きワークシートを生成AIにてデジタル化」などと書いておいた方がよいかもしれません。
そこは、活用者のみなさんの判断にお任せします。
ただ、一番使用したい目的は、毎年の実践の効果検証を学校内で行うことです。
手打ちでデータ化をしていては、持続的ではありません。
内向けのデータ活用であれば、ChatGPTの精度からすると誤差にもならないレベルです。
ですから、積極的にChatGPTを活用していきましょう。
テキストマイニングにかける
最後にテキストマイニングにも少し触れておきます。
OPPAなどでは、単元前と単元後で生徒の記述にどのような変化があったかを調べることがあります。
振り返りの記述では、単純に生徒がどのように考えたかを知りたいこともあります。
テキストマイニングでは、このようなことを質的データとして分析できます。
以下のサービスが有名です。
どちらも無料で使えるツールです。
初めてテキストマイニングを行う方は、AIテキストマイニングがよいでしょう。
Web上でテキストを入力すれば、すぐに結果が得られます。
もう少し学術的にテキストマイニングを行いたいなら、KH Coderがおすすめです。
Windows版・Mac版ともに無料です。
ただMac版は自分での設定が難しく、自動設定のソフトを利用する場合は若干値段が張ります。(2024/7月の時点で12,800円)
共起ネットワークを分析すれば、言葉の頻度や関連性などをもとに、生徒の学びの様子を分析することができます。
まとめ:質的データを活用して教育活動を検証しよう
今回はChatGPTを活用して、生徒のワークシートをデジタル化する方法を紹介しました。
自由記述がデジタル化されることで、テキストマイニイングなどの分析が容易になります。
デジタルデータを手に入れるのであれば、そもそもGoogleフォームなどを用いてアンケート調査をすればよいでしょう。
しかし、検証は教育活動をよりよくするための手段であって目的ではありません。
検証のために振り返りを書くのではなく、自身の学びを深めるための記述とならなければなりません。
そのため、OPPシートやワークシートを活用することは、まだまだ教育界の主流となるでしょう。
だからこそ、それらを簡単にデータ化するためにChatGPTの力を借りるのです。
ChatGPTは、4oになってから飛躍的に性能が上がりました。
このスピードと正確性が無料で使えるのに使わない手はありません。
このサイクルこそが、本来の教職の楽しさでもあります。
生成AIを活用して、ぜひ生徒の成長につながる、自身が楽しめる実践を実現させてみてください。
今回の記事が先生方のよりよい実践につながれば嬉しいです。
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教育活動を教員がしっかり振り返ることって大事ですよね。