
形式的だったり、若手が自由に発言できなかったりすると気が進みませんよね。
みなさんの学校では、授業研究をどのように進めていますか?
「研究授業は緊張する…」
「協議会では建設的な議論ができていない気がする…」
そのような悩みを持つ先生も多いのではないでしょうか。
研究授業は、単に指導方法を評価する場ではなく、生徒の学びを深めるための貴重な機会です。
しかし、進め方を間違えると、意見が出にくくなったり、授業者が萎縮してしまったりすることもあります。
そこで今回は、授業研究をより充実させるためのヒントを5つ紹介します。
「教師の指導方法」ではなく「生徒の学び」に焦点を当て、実りある協議会にするための工夫をまとめました。

授業研究をより意義のあるものにしたいと考えている先生方の参考になれば幸いです。
高校の数学教員として10年以上授業を行っています。
ただ学習内容を教えるのではなく、「学び方を教える」をモットーに授業作りをしています。
生徒同士の対話を重視した授業展開を行うことで、生徒の発言から授業を創ることを目指しています。
目次
有意義な授業研究とは?
授業研究は、教員同士が学び合い、授業の質を高める重要な機会ですが、以下のような課題を抱えている学校も多いでしょう。
しかし、これらの課題を克服し、気持ちよく研究授業ができる環境を整えることができれば、
- 教員がチャレンジしやすくなる
- 安心・安全な場ができ、活発な意見交換が行われる
- 研究授業の実践者自身の学びが深まる
- 研究授業の機会が増え、職員全体の授業力が向上する
など、授業者のみならず学校全体の教育力が高まっていきます。

こうした状況を作るための具体的なヒントを次項で5つ紹介します。
授業研究を充実させるヒント5選

ここからは、実際に私が経験してきた授業研究のやり方で「よかった!」と感じたものを紹介していきます。
教師の指導方法ではなく、生徒の学びの変化について協議する
授業研究では、「教師の指導方法」ではなく「生徒の学びの変化」に焦点を当てることが重要です。
教師の指導方法を話題にしてしまうと
- 若手は先輩教員に意見ができない
- ベテラン教員の価値観を若手に押し付ける
という構造が生まれやすくなります。
一方で、生徒の学びの変化について協議をすれば、
- なぜ学びが深まったのか
- 思考が広がった瞬間はどこか
- 対話に参加できていたか
などの視点から発言が起こります。
それらが、教材の捉え方や発問、グループ学習のタイミングなどにつながっていきます。
初めから、「あの時の発問はこっちの方がよかった」などの発言をすると、代表者として授業をした先生からすると落ち込みや反発の気持ちが起こります。
生徒を主体にすることで、あくまで主役は生徒の学びであり、そのための建設的な意見が出てきます。
そのため、授業者も納得をした形で意見を受け入れやすくなるのです。
また、授業者に視点を当てると他教科の先生はほとんど発言ができません。
他教科なので、専門性が乏しいのは当たり前で、授業形態や学習内容に意見することができないからです。
ここでも生徒目線の議論にすることで、他教科の先生でも協議に積極的に参加することができます。
▼授業観察の考え方については、こちらの記事でも紹介しています。
全員が必ず1回生徒を主語に発言する
二つ目は、生徒の学びを目線にした協議を活発にするための具体的なアイデアです。
それは、授業検討会の最初に全員が必ず生徒を主語にして発言をするのです。
先ほども話したように、生徒を主語にすれば、教員は嫌な気持ちにはなりません。
ですから、「発言を全くせずに終わる」「参加者の学びがない」ということがないように、全員が授業を参観した際の気づきを最初に発言するのです。
しかし、研修係がいきなり振っても困惑してしまう先生もいるでしょう。
そのために、以下の工夫を取り入れます。
まず紙にメモを書いただけでは、授業の状況を思い出すことが難しいです。
また自分ではイメージできていても参加者にその様子は伝わりにくでしょう。
そこで、視覚的に振り返ることで授業を思い出しやすくし、発言をしやすくしたり授業の状況を共有したりするとよいのです。
そのために、研修担当はとにかく写真をたくさん撮り、スクリーンにスライドショーとして流しておきます。
そうすることで、グループの学びの雰囲気や授業の場面を共有しながら発言ができます。
また、座席表を用意しておくことで、より具体的な発言となり、イメージの共有がしやすくなります。
指導案ではなく、授業デザインにする
完璧な指導案を作るのではなく、「授業デザイン」にフォーカスすることで、本質的な議論がしやすくなります。
特に本質から外れた書式だけにこだわった指導案は、授業者の意欲を削ぐのでおすすめしません。
授業デザインは基本的には授業者が参観者のために書くものです。
その際、自分の授業へ対する想いを共有し、授業検討会で前提が異なることへのギャップを防ぎます。
こうすることで、授業者が自分と異なる指導法で授業をしていたとしても、前提が揃っていることで、建設的な意見が出やすくなります。
例えば、振り返りシートを活用している授業に対して
「振り返りシート書かせていると時間がなくなるよね?」
なんて発言は出なくなるのです。
授業者にポジティブなコメントを書く
研究授業後に、授業者へフィードバックを残すことで、授業研究がよりよくなります。
その際に気をつけることが、ポジティブなコメントを残すことです。
改善点は、研究協議の中で出てきた気づきをもとに、授業者自身が最終的に考えるべきものです。
コメントという一方通行かつ短い文章では正確な趣旨は伝わりませんし、「もっとこうしたほうがいい」は単なる個人的な価値観になりがちです。
ですから、研修担当がルールを設けてコメントをしてもらうようにしましょう。
研究授業は授業者だけでなく、参観者も学びを深める場です。
自身の学びの視点を踏まえれば、必然的に良いところ、真似したいところ、勉強したいところを書くようになります。
グループ協議に生徒を入れる
ここまで、授業者の指導方法ではなく、生徒の学びに視点をおいた授業検討会の進め方を紹介してきました。
授業の主役は教員ではなく、学習者である生徒です。
その生徒を主体として協議を行う究極は、学習者である生徒自身に授業検討の場に合流してもらうことです。
生徒が参加をすることで、以下のようなメリットがあります。
教員が気づかない視点を得られるだけでなく、生徒自身も授業者の目的を知ることで、自身の学びに対する姿勢を振り返る機会になります。
また、ただ授業をしているだけだと思っていた先生が、裏側で自分たちのために深い議論をしていることに気づくこともあります。
そのような経験を通して、生徒と教員の信頼関係の構築にもつながり、その後の授業がよりよいもになっていきます。

実際に検討会に参加した生徒の感想を見るとポジティブな感想を書いてくれていることが多いです。
もしかすると、慣れていない教員は抵抗を感じるかもしれません。
しかし、「生徒のリアルな声」を共有し、授業改善に活かしたり生徒の学びの姿勢が変わったりしていくことで、少しずつ受け入れられるようになっていきます。
まとめ:有意義な授業研究を行い、学校の学びを促進させよう!
今回の記事では、授業研究を効果的なものとするためのアイデアを5つ紹介してきました。
授業研究は、教員の指導力向上だけでなく、生徒の学びを深めるためのものです。
「生徒主体」の視点を持つことで、研究授業はより有意義な学びの場となります。
そして、教員だけで議論を進めるのではなく、本当の学びの主体である生徒も一緒に巻き込んでいくことで、真の意味での授業研究となっていきます。
また授業者が憂鬱な気持ちにならず、自身の学びに前向きになれること。
参加者も時間の無駄にならず、自身の学びにつながること。
このような視点を持つことが、持続的な授業検討に結びつくでしょう。
教員の最大の業務は授業です。
教員も生徒も楽しめる授業が展開されることこそ一番の喜びです。
ぜひ、研究授業を有意義な学びの場としていきましょう!

今回の記事が、みなさんの学校運営や研修の方向性の手助けとなれば嬉しいです。
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うちの学校の授業研究は、空気が重くていまいち学びにつながらないのが課題で…。