学びを促進させるためには、環境設定が大事ですよね!
近年は、主体的・対話的で深い学びを目指した授業展開が求められます。
しかし、以下のような悩みを抱えている先生も多いのではないでしょうか。
- なかなか生徒同士が対話をしない。
- グループになっても授業と関係ない会話で盛り上がっている。
- そもそも机をくっつけたり、離したりする時間がもったいない。
このような悩みをお持ちの場合には、ぜひ座席配置について考えてみてはいかがでしょうか。
多くの学校では、一斉授業に適した全員が黒板の方向を見ている座席になっています。
この座席を少し工夫することで、生徒同士の対話が一気に深まります。
今回の記事では、私自身の実践をもとに、主体的・対話的で深い学びを実現するための座席配置について紹介していきます。
ぜひ先生方の授業の参考にしてみてください!
高校の数学教員として10年以上授業を行っています。
ただ学習内容を教えるのではなく、「学び方を教える」をモットーに授業作りをしています。
学級経営や授業開きでは、対話的な学びを実現するための人間関係づくりも大切にしています。
目次
環境が学習の質を変える
従来型の座席配置のデメリット
教室の座席は40人学級であれば、6列×7行を基本に整列しています。
この座席配置は、一斉授業を想定したものです。
教師が説明を行い、一律の内容を伝達するには適した学習形態と言えるでしょう。
しかし、現在は主体的・対話的で深い学びの実現が求められています。
そのため、教員による一方的な講義形式だけでは不十分で、生徒同士の対話を授業内に取り入れることで生徒の学びを深めていく必要があります。
生徒の学びを深める上で、従来の座席配置では以下のようなデメリットが挙げられます。
机間支援が届かない
生徒が問題を考えている間、教員は机間支援を行います。
そこでは、生徒の学習の進捗状況を確認したり、進んでいない生徒に声かけをしたりします。
そのとき、従来型の座席では、図のように机間支援を行う先生方が多いのではないでしょうか。
一回の机間支援に対して、2往復しながら個々の学習状況を見ていては時間が足りません。
誰かに声をかけていると、それだけで1問の時間が終わってしまいます。
その結果、結局1往復しかできないため、限られた生徒の学習状況しか把握できないということが多々起こります。
意見交換がしにくい
従来型の座席では、教員と生徒の1対40の関係です。
生徒同士のペア学習やグループ学習を行う際には、体を向けたり机を動かしたりと一手間加わるため、意見交換に抵抗が出ます。
またクラスの人数が奇数であったり欠席者がいたりすれば、相談し合う仲間がおらず学習に置いていかれる生徒も出てきます。
教師主導で話し合いのタイミングを指示しなければならない
従来型の座席配置では、全員が教員の方向を向いています。
このように座っていると自然発生的な対話が生まれません。
そのため、対話を促すために教員が指示を出す必要が出てきます。
「では隣の人と話し合ってみて」
「机をグループにして話し合ってみて」
などは多くの授業で耳にしますよね。
学びの進捗状況は、生徒それぞれです。
例えば
- 今は一人で考えたいと思っている。
- 今は友達からヒントをもらいたいと思っている。
- 人に説明できるほど自分で消化しきれていない。
などです。
教員の指導計画に沿って進めることも大切ですが、生徒の欲しているタイミングで環境を提供してあげることも重要な視点です。
いつでも一人で学べる。
いつでも相談できる。
一斉授業型の座席の距離感では、少しハードルが高いのです。
学習の深まりは、「生徒のやる気」ではなく「学習の環境」
以上のように、これからの時代に応じた授業スタイルを実践するにあたって、一斉授業型の座席のみでは生徒の学びを深めることが難しいと考えられます。
また、授業中に以下のような様子が見られることはありませんか?
これらを目の前にすると、
「部活で疲れているのかな?」
「夜更かししたのかな?」
「はたまたやる気の問題か?」
などと考えてしまうこともあるかもしれません。
もちろんその可能性もゼロではありませんが、授業者が考えるべきことは授業や学習環境に問題がないか見直すことです。
- 退屈な授業になっていないか。
- 相談しにくい環境ではないか。
このような教員側の授業づくりに責任がある場合も少なくありません。
座席を少し変えてみるだけで、生徒の対話が促進され、より学びに集中できるようになります。
たかが座席、されど座席。
改めて学びの環境について考えてみましょう。
学習を効果的に進める座席例
学びを深めるための座席について教えてください!
私が行っている座席配置はシンプルです。
でもなぜその座席にするのか、意味づけをしっかり持っておきましょう!
私自身がおすすめする座席は、「グループ型」と「コの字型」の2つです。
これらは知っている方も多く、特別感はないかもしれません。
ここで大切なのは、「なぜその座席にするのか」です。
自分自身で教育観を持ち、意味づけをしておかないと、形式のみの授業環境となってしまいます。
活動あって学びなし。
そのような形だけの授業形式にならないよう、私自身の意味づけについて紹介していきます。
グループ型
まずはグループ型です。
グループの形にすれば、対話型の授業が行いやすくなります。
以下の図のような形でグループを作れば、一斉授業型の席からの移動も少ないです。
また、グループにすることで机間支援も行いやすくなります。
グループ全体の学びの進捗状況を見るのに一周で済みますのでより多くの班に声かけができます。
ここでのポイントは、個別支援ではなくグループ支援です。
座席の形を変えたとしても生徒の数は変わりません。
一斉授業型の座席配置では、1対40の関係ですから40人の支援が必要となります。
一方でグループ活動を前提にしていれば、グループの進捗状況に応じて支援を行えばよいのです。
解決が難しいグループにはきっかけを与えたり、理解できている生徒がいる場合は共有を促したりするのです。
グループにすることで、生徒は他者と協働するための動機づけもできるので、学びに向かう意識が高まります。
グループを作るときは5人班をなるべく作らないのもポイントです。
生徒数が奇数の場合、5人グループを作るよりも3人グループを作ることをおすすめします。
5人グループで誕生日席ができる場合、2−2−1で対話が行われることが多く、残りの一人が孤立してしまうことがあるからです。
一方で3人の場合は、2−1となることもありますが、3人が正三角形になることで同じ立場でグループを作ることができるのです。
コの字型
次は「コの字」型の座席配置です。
コの字型の座席は、生徒が意見を全体に向けて発表する際に適した座席です。
教員が板書やプロジェクターなどを用いて説明をするときにも見やすいのが特徴です。
個人的には、文系科目の授業でやりやすい座席配置だと考えています。
コの字型では机間支援も行いやすいのも特徴です。
下図のように内側を回ることで全体の学習状況を簡単に見ることができます。
また、ペア活動やグループ活動に切り替えるのが容易なこともメリットでしょう。
↑隣が近いのですぐにペア活動に移れます。
↑グループも回転すればすぐにグループ型に切り替えられます。
↑教室の形によっては、このようなグループの形もありです。
若干のデメリットは、真ん中が広くなる分、座席が狭くなってしまうことです。
ただ隣同士が近い分、話し合いをしやすいのが「コの字型」の座席でしょう。
少人数であればグループ&コの字型、40人ならグループ型がおすすめ
きょういちさんは、数学ですよね?
どの座席配置を活用しているのですか?
私自身は、グループ&コの字です。
40人のコの字型は、スペースが狭くなるデメリットがあります。
文系科目など言葉で意見交換を行う場合や一斉講義も取り入れる授業スタイルの場合は悪くない形です。
一方で生徒主体のグループ活動をメインにする場合には、グループ型がよいでしょう。
生徒が発表でプロジェクターや板書を使う場合には、体だけ前に向ければ対応可能です。
ですから、40人授業の場合にはグループ型を活用しています。
また数学などでは、少人数授業を取り入れることも多いです。
そのような場合は、グループ&コの字にすることで、板書も見やすくグループ学習も行いやすい環境を作ることができます。
↑少人数ならグループ&コの字
自分の授業スタイルに応じて、座席を考えていくことが重要ですね!
大切なのは、「一斉授業型の座席しか選択肢がない」という状態にならないことです。
まとめ:学習環境を整えて学びに向かう姿勢を高めよう!
今回の記事では、生徒の学びを促進させるための座席配置について紹介してきました。
- 生徒が授業に集中できない。
- ペア学習やグループ学習が深まらない。
このような悩みは多くの先生が持たれています。
これは、生徒のやる気の問題ではなく、授業者の与える学習環境の問題かもしれません。
一斉授業型の座席配置はデメリットも多く、集中できないことも多いのです。
そこで本記事でおすすめした座席配置が「グループ型」と「コの字型」です。
これらの座席配置にすることで
- 一人で取り組んでもよい
- 好きな時に相談ができる
- 生徒や教員の説明も体を向けて対応できる
など、これからの時代に求められる「主体的・対話的で深い学び」の実現に適した座席配置となります。
学習環境を整えることで、生徒の学びは促進します。
そして、「学習内容を教える」から「学びに向かう力を育てる」へ教育観をシフトすることができます。
そうなると、授業内における教員の役割も変更してくるでしょう。
生徒が本来備えている学びに向かう力を最大限発揮させるためにも、授業環境を整えてみてはいかがでしょうか。
そして、学びに向かう力が高まった生徒は、もはや座席に関係なく学びを進めます。
自分自身の判断で行動し、学びを深めていきます。
学習に向かう力、生徒の自律の段階に応じて、教員がサポートをしていく。
そのための手段として、座席配置について考えてみるのもよいのではないでしょうか。
今回の記事が先生方の授業の活性化につながれば嬉しいです。
▼これからの教師の役割については、こちらの記事でも紹介しています。
▼自律の段階については、こちらの記事でも紹介しています。
▼今回の記事に興味を持ってくださった方は、こちらに記事もどうぞ!
対話的な学びを実現させるために、座席を変更したいのですが、どのような配置がおすすめですか?